“ユニバーサルデザイン”に満ちた社会をめざして
札幌式トイレ考案者 米木英雄氏

 皆さんは外出先のトイレで苦労したことはありませんか。

 せっかく探し当てたトイレも、狭くて暗かったり、あるいは汚れているなど、戸惑いを感じたことが、一度や二度はあると思います。
自由に外出できる人がそうである以上に、高齢者や身体の不自由な人たちのような、動作制約や移動制約のある人にとっては使用できるトイレが限定されています。

 いま全国各地で策定されている「福祉のまちづくり条例」では、ノーマライゼーション社会の構築をうたっていますが、その中には、動作制約や移動制約のある人も、社会への積極的な参加と行動をすすめる意味が含まれています。その意味で、トイレ整備は、外出機会を促す大きな要件です。

 札幌式トイレは、健康なひとも共用できることを基本とする“ユニバーサルデザイン”の原則に基づいて開発されたトイレです、したがって従来のように「高齢者のために」とか「障害者専用に」といった発想ではなく、人を分けず、できるだけ多くの人に対応できるように工夫されています。同時に、進行
する少子化・高齢者社会がそのピークを迎える前に、誰もが使えるトイレを整備することは、動作制約や移動制約のある人にとっても、支援する家族やヘルパーにとっても、体力、時間、費用などの負担を軽減でき、地域社会にとっても有効なことといえます。

米木英雄氏プロフィール
福祉のまちづくりサポーター
1938年、旭川市生まれ。武蔵工業大学建築学科卒。一級建築士。北海道開発コンサルタントを経て「福祉のまちづくり研究会」座長や札幌市福祉のまちづくり推進委員も務める。福祉のまちづくりサポーターと称し、論文も多数。近著に「在宅介護時代の家づくり・部屋づくり」(寿郎社)「21世紀型住宅の常識−バリアフリーの建築マニュアル」(雲母書房)など。現在は全国から講演依頼やコンサルタントに応じる多忙な日々。